tampere   

2013 12/30
近況

キッチン

KITCHEN

レッドオーク材のキッチン
無垢材の重みだけではない、繊細さが感じられる設計でしっとりとした家具のようなキッチンに仕上がりました
何とくらべるわけでもありませんが木の用い方がカーン(Louis Kahn)の住宅建築に繋がるように私には感じられます

 

設計 服部信康建築設計事務所


   *

振り返ると半年ほどブログの更新がなされていませんでした
このお休みに振り返るようにして撮った写真を少しづつでも紹介していきたいと考えています
製作の現場に集中すると、なかなかデスクワークに向うことができずにいます
「切り替えができるように」が 来年の目標のひとつです

   *

製作の現場を工房から建築現場へ移すことが多かったこの半年間
携わった仕事が、キッチンなどの造作家具以外にも建具工事、床貼り、その下地工事など
現場では他の職種の方から「大工さん」「建具屋さん」などと色々な呼び方をされたのは楽しい記憶になっています
おおよそ家具屋の域をこえての仕事を任されることが多くあった ここ数ヶ月間でした

私は常々、家具を製作して届ける仕事に少しだけ物足りなさを憶えています
例えるなら「ケーキにいちごを添えるような」感覚
「いちご」という喜ばれて当然と言ってもよいものを
用意された受け皿に最後にポンと据え置く 横着にいってしまうとそんな感じです

住まい作りには多くの人が関わっています

私たち家具屋のような「喜ばれる」業種もあれば
納まっていて当然で、ほめられることも決してなくて、目に見えてこないような仕事もたくさんあります

いろいろな仕事を経験できたことで、家具づくりということへの捉え方も少し変わった気がします
ケーキづくりの生地を仕立てるところがわかると、いちごの置き方も変わるかもしれません

非常に悩み、手間もかかったのだけれども、それは確実に私たちの糧となり次に繋がるものになっています

今年も機会を与えてくれたクライアントの皆々様に本当に感謝しています

それから、長くお待たせしているクライアントの皆さん
今、一所懸命進めていますので もう暫くのご辛抱を!

皆々様、どうぞ良いお年をお迎えください






2013 08/31
変わらないスタンス・ 継続していきたいテーマ

ソファーヌメ
ソファーヌメ
ソファーヌメ3


Sofa
W2800 (1400X2)D850 H850
フレームはオーク、クッションは羽毛を主材にヌメ革で包み袋を形成したソファー
4人掛けであるが、2人掛けを2体に分けて使用する事も可能

 *

依頼される仕事へは変わる事のないスタンスでのぞみたい
その時々に「ベスト」は何かを考えること、決して同じものの繰り返しにはならない家具を作っていこうと考えている
ハイエンド〇〇のためのデザインであろうと、ご近所さんが頼んでくるちょっとした修理ごとであろうとそれは同じでいたい

その時々のベストということを結果に求めているのと同時に
ここ数ヶ月、継続的に考えている私自身の家具づくりに対してのテーマがある

作られる家具は、作られた時点が最も良いコンディションである 普通は
それが、例えば、10年後、15年後にピークのコンディションがやってくるような家具は作れないかと考えている

「無垢材で作られる家具は味わいが増す 」という言葉は巷にあふれるただの「宣伝文句」であって
それが全ての無垢材の家具にあてはまるとは思っていない
私自身もその言葉をいいように使っていたのも事実で、今はそれを反省しているし、その表現は使わない
実際に私が初期の頃に作った家具は15年くらいの年月がたっていて
だいたい始めた頃といえば身内くらいしか仕事を頼まれる事はないということもあって
その身内が気兼ねすることなく、ハードに使い込んだ家具は決して「良い味わい」はまとっていなかった

完成直後よりも数年経ってからピークがくるような家具はどうすれば作れるのか
今のところ明確な答えはみつかっていないが、ひとつ思っていることとして

「手触り」ということにヒントがある のではないか、と

作りながら、形を確かめるように手で撫でてみたり
開閉する扉の感触を確かめてみたり、手に受ける感触が正しい事をしっているという気がしている

これは継続していきたい私の中の家具づくりのテーマである



2013 07/06
可能性ある素材

bruss


頼んであった金属製のツマミが出来上がってきた

既製品にはない細身のものが欲しくて、旋盤加工で製作してくれる業者さんにお願いした
これまではツマミは、丸棒をぶつ切りにしただけの非常に単調で、それが潔い格好良さとして受け取れるものとしていたところだが
少しカタチをつけることにした 潔さは失せたかもしれないがこのほうが良い
軸は5ミリとかなり細いけれど、ラッパ状に加工しているので手がかりは良好で、 家具に取付けた時の馴染みも良いだろうと考えている

製作中のキャビネットに取付ける予定で、完成が待ち遠しいところです

 *

最近は、少し考えを新たに製作に取り組んでいる
いろいろな人にも出会い、また多くの人の協力を得て私たちの家具つくりは先に進んでいく

しばらく後に、新しい家具をいくつかここでお披露目できそうです





2013 06/24
小さな家具

額縁
ナラスツール
チェリースツール
ナラチェスト
ナラチェスト


小さな家具をいくつか続けて製作した

木の魅力がどのようなものかということや
よく手仕事がなされた家具を手にすることの幸せな感覚というものを
小さな家具からでも感じてもらえるように仕事をする




2013 06/08
cherry

チェリーキャビネット
チェリーキャビネ
チェリーキャビネット

Cabinet
W1080・D500・H1100

ブラックチェリーのキャビネット。引出しなどの内部もすべてチェリー材で製作することに
間仕切り的な置かれ方になるので写真にはないが背面ももちろんチェリー材で製作
比較的に張り込んだ仕事、ということになる。
いつもそうしているかというと、そうではなくて安価な材料を上手く使ってお値打ちにつくることも家具つくりでは大切なことだと考えている
ただ、扉をあけたら、、家具の裏をのぞきこんだら、、、というところで落差のない家具に仕上げるようにもしたい

それは、少し気を使うというか、最後は作り手の心意気みたいなことで解決できるではないかと思っている



2013 05/31
New

ラタンチェア
ラタンチェア2
ラタンチェア3

Chair
W480・D470・H740

籐編みのシート、真鍮の留め金、ソープフィニッシュのオーク材
この椅子を構成するのは、昔からある素材と技法、それと単純な形
私たちなりの調整をしたことで少し新しい椅子ができたように思う

 



 

2013 05/29
仲間入り

チェリーデスク
TVボード
チェリーテーブル

Desk 
W1800・D800・H710
AV Bord 
W1800・D550・H450
TV Bord 
W2000・D450・H400
TABLE 
W1600・D900・H680
CHAIR 
W400・D470・H780  

全てチェリー材で製作

 

建築設計 蒼生舎

 

 



2013 05/16
輪郭

ウォールナットテーブル
ウォールナットテーブル

天板などの端部断面の形をプロファイルと呼んだりする
プロファイル、つまり輪郭である

些細なことではあるが、この輪郭を操作することでその家具の印象はいくらか変わることになる

この家具のプロファイルは楕円を切り取ったような形をしている
単純な円弧とするよりも端部は尖っていて、でも丸みもある
シャープではあるが、そこには温かみも感じられる
稜線が光と影の境界をつくり上品さが感じられるようになったとも思う

こうしたプロファイルへのこだわりは古い家具にはよく見られる
古い家具を見ていると手仕事にますます魅力が感じられるようになる

私は手仕事の痕跡というものを作る家具に上手く残せるようになりたいと考えている
熟練の職人がそうであるように

そこにはまだ程遠いが、少しづつ近づいていければと思う





2013 05/08
可能性ある素材

籐編み キャビネット
真鍮 把手
籐編み キャビネット2

玄関に置かれるキャビネット
下足入れとして、また架台として季節のしつらえが飾られることになる

  *

依頼主の自宅玄関には備え付けの収納などがなく、そう広くはないその空間に家具を置くことにも少し戸惑いがあった
また、収納としての役割というよりは、家の顔となる玄関にふさわしい家具がどのようなものかを悩み続けていたようでもあった
そうして依頼主が巡りに巡って見つけたのが北欧製のビンテージ家具で籐編みの引き違い戸のもの
それはウェグナーがデザインしたとても控えめで品の良い、ただし背の低いサイドボードであった

玄関の家具はそれを下敷きに空間にふさわしいプロポーションで製作することにした
籐の編み方や、足下の樹種を違えているあたりのディティールはウェグナーのデザインに倣ったもの
真鍮の手掛けはバランスを見て加えることにした

籐の控えめな素材感と、編み込みというハンドワークの温かな表情は、木の家具とはまた異なった魅力がある
天然素材ゆえの経年変化というのも、無垢材を扱う私達にとっては馴染みあるもの
今はまだ明るい籐の肌色も、これから木材と同化するように飴色がかっていく

時は刻まれ、この家具の品格は増していくだろう

 





2013 04/16
オーク楕円テーブル

楕円形のテーブル 

キッチンの袖に配置するのだけれど、お客様はあえてテーブルの形に楕円を選ばれた
とても意欲的で素敵な選択だと思った

納品に伺って、すでに取付けてあったペンダントや、テーブルがやってくるのを待ち構えていた椅子達と合わさった姿を見て
テーブルがこの場にとても良く似合っていると感じる
楕円という形は、色々ぶつかり合うものを緩衝させるような役目をはたすのではないか
楕円形はそれだけではどこかとらえどころがなくて、デザインとしては非常に弱い形をしている
(一方で正円形や四角形は強い形をしている)
ただ、弱いゆえに、他者とあわさることを拒まない

これが今のところの私の楕円形への解釈
楕円のテーブルは私達にとってはすでにスタンダードなもので、とりわけ好んでいるし、そしてこだわっている

今回のテーブルもいくつかの新しいアイデアからなる







2013 04/03
オーク 真鍮

ここ数ヶ月の仕事をできるだけアップします
ご覧いただけると嬉しいです
OrderWork26
OrderWork27
OrderWork28

 

手掛けた仕事を見直すように、また思い返して感慨にふけったり
つい先日のことなので、それほど昔の話ではないが
新しい仕事に集中して取りかかると、少し前のことがものすごく昔の出来事のように思える

いくつか作品を見返す中で、依頼主には些細なことかもしれないが
私には大きなメッセージをいただくことになった出来事がある

依頼いただいた家具は、リビングのボードとドレッサーの二つ
ご主人がわざわざ工房まで足を運んでくださったのは1年程前のことで
どのようなデザインが好きだということや、私たちに相談を持ちかけることになった経緯などの話をうかがった
打ち合わせのなかで印象に残ることがいつも何かひとつあるのだが
その時の私にはご主人が最初に話された動機のことが印象に残った

ご主人はこの春に退職され、新しい生活の場を設ける
この機会に、結婚した当時に妻に買ってあげることが出来なかったドレッサーを作ってあげたい
ということを冗談を交えて面白おかしく話してくれたように記憶している

 *

納品当日は雨降りで、奥様は風邪を引かれていて立ち会えなかった
後日、メールをいただいた
ご新居にて奥様に鏡台をお披露目された様子が書かれてあった
「妻は大感激で椅子に座ったり鏡をのぞき込んだりして、しばし鏡台から離れませんでした
これで私も永年の負い目というか、心に引っかかっていた思いが解決したようで嬉しいです」

 *

鏡台を作るにあたって、いつもと違ったのを憶えている
いつもは、こちらがリードするようにデザインを説明して、お客様に理解を促すように進めていく
それが反対に、こちらが理解をしながら作っていく感じだったように思う。
これをものすごくかいつまんだ解釈にすると
私よりもご主人の方が「よい家具にしようとしていた」ということだと言える気がする。

私は作家でもアーチストでもない
なので、製作の依頼を請けることがなければ、たぶん何も作らないと思う。
私から発信するメッセージというようなものは然程ない

ものを作る上で、いつも気になるのは
例えば、その家具が置かれる空間や使う人がどうか、という背景
このご主人の場合であれば、人と空間に時間軸が加わっていて、それは物語といえるかもしれない
物語や空間において、きちんと文脈がつながるかたちでモノづくりがしたい

この鏡台では、私は一歩ひいたところで 製作していたのかもしれない
それも文脈においては正解ということで良かったのだろうと思っている

まだまだ力のない私たちができることなんて、そう多くも、また大きいことでもない

見逃しそうな小さなことをしっかりと拾えるように
少ないながらも培った経験をきちんと役立たせることができるように
いつも準備するだけである





2013 03/02
仲間入り
楕円テーブル

TV台

ひとつひとつのモノを大事に選び「ヒトがモノで上手に暮らす」そんなお家であった
ご夫婦のセンスという規律でとても気持ちのよい空間に感じる
製作前に下見に来た時に、ここに何かをデザインしたいというよりも
家具が、ここにそっと仲間入りできる様なもになれば良いと思った
スタイリッシュとかデザインとか、ちょっと疲れてしまうものでなくて

静かに存在する家具、暮らしに寄り添う優しい道具

これから、こういう事をもう少し考えて家具作りをしていくことにしよう



2013 02/11
可能性ある素材
ウォールナット
柾目に挽いたウォールナット
縮みの出た杢目や流れ節を取り込む
材に導かれるように美しい家具がつくられる


ほどよく漉かれたなめし皮
張りとやわらかさが同居する素材
まだニュートラルな色をしている

可能性ある素材は形づくられることを待っているかのように思える



 

2013 02/04
美しいテーブル
楕円テーブル

完成した
と言いたいところだけれど
強度が不十分

最近、削りものの仕事を多くこなしている
こういう丸棒や、楕円形のエッジなどは手加工で削る
つまり、余分な材を削りとるという作業である

ものづくりにおいて机上で十分に考えることはとても大事な行程
私自身もこの考えるという時間をひと一倍大切にしているつもり
でも、製作の現場に身をおくことではじめて
図面では見えてこなかったひとつひとつの部材のかたちやリアルな大きさというのを感じることがある
家具のかたちがブサイクだったりするのは、このひとつひとつの部材のかたちが洗練されていないことが理由であることが多いのではないか
私たちの工房では考えながら作る、作りながら考えるということが許されている
むしろ時間をかけるものづくりが求められている
やっぱり木の家具つくりでは、この考えながら削るという作業にこそ大事な何かがあるような気がする

とはいえ、このテーブルはお蔵入り、過ぎたるは及ばざるがごとし、である
いつかリベンジしたいと思う



 

2013 02/03

この週末に工房へお越しいただいたお客様との会話で、魚釣りのお話に
そのお客様は渓流釣りをされるらしい

渓流の魚とは、イワナやヤマメ、マスなどのことで珍しい種なのかと思っていると
いや最近では養殖の管理釣り場(いわゆる釣り堀みたいなところ)でじゃんじゃか釣ることもできるらしい

でも、そのお客様はそうしたところへ行くわけではなく
情報誌やネットで釣果のあるスポットを調べるわけでもなく
地図なき道を進み、自分の足で漁場を探し
時にはロープをかついで山奥へ入っていくらしい、あくまで釣りがその目的で、だ
大漁でなくても、そうして釣れる1匹がたまらないのだと話していた

その気持ち、ものすごくよく解る
続けることができる趣味とはきっとそういうものだ

それが仕事(=家具づくり)となるといささかどうかとは思うのだが 、、、

 


 

2013 01/28
新しい試みのエクステンションテーブル
エクステンションテーブル

今回は脚ごと伸びるやつ
金具に頼らない、すべて木製作られる機構
ロウを塗れば滑りもなめらか

えくすてんしょん

伸張部分は脇にしまっておくだけ
この解決策、悪くないなと思う
道具としての家具がもつ、素朴な美しさが感じられる




 

2013 01/18
休息椅子

昨年末から少しづつ進めてきた一人掛けの休息椅子、製作中のモックアップ

ソファーやリビングで寛ぐための椅子の製作を依頼されることも少なくない
そんな時に議題にあがるのは、まずは座り心地の良さがどうかということ
座り心地が良いか悪いかは人それぞれ背格好も違えば感じ方も違う
見たところが美しいかどうかも図面ではわかりづらい

なので、まずは私自身が良いと感じる座り心地や美しさというもので基準を作ることにした

フレームの角度、角部材の形状、手に取りながらひとつひとつ組み立てては壊すことを繰り返してようやくここまできた
フレームはかなりの手応え
クッションも一工夫したものを考えている
良い椅子になりそうだ

イメージ

本棚
明日は、この本棚の納品と修理を兼ねて東京まで。



2013 01/18

work25 work26 に作品をアップしました。



出口真樹/1972年 三重県生まれ。tampereのすべての家具のデザイン
を手掛けるデザイナー兼木工職人。

1995年多摩美術大学デザイン科卒、1998年住宅設計の仕事から一転して
家具職人の道を目指しデンマークへ留学。デンマークで家具の製作技術と
家具デザインを学ぶ。2000年帰国。自身の家具製作アトリエを開設。

 

 

 

 
タンペレ |  ブログ | 定番家具 過去作品 | お問い合わせ | リンク | サイトマップ
Copyright (C) 2009 tampere.jp All Right reserved